『脱げない』は、本来なら語るような特長ではない。

日記

皆様こんにちは。相変わらずの暑さですが、いかがお過ごしでしょうか。

先の熊本県を震源とした地震により、被害に遭われたみなさまに、心よりお見舞い申し上げます。
みなさまの安全と、被災地の1日も早い復旧・復興を心よりお祈り申し上げます。

Annaの靴を作ったとき、私が念頭に置いたことの一つ。
「いざというとき、ちゃんと動けるか」
ということです。
災害はもちろん、事故や急な体調不良など、人はいつ「走らなければならない瞬間」に出会うか分かりません。
綺麗にドレスアップをして行きたい場所があり、そこで災害が起きたら。一歩足を進めればかかとがパカッと脱げてしまう靴を履いていたら、いざというとき走れないどころか動けません。つま先だけでひっかけてズルズルすり足歩行をしていたら怪我につながりかねません。そんなことはあってはならないのです。

何でも試せるサイズの足だったなら、無限にある選択肢の中から自分の足にぴったり合うものを探すことができるでしょう。かかとがパカパカ、足を上げるとズルズル引きずるような靴をわざわざ買わないのではないでしょうか(デザインが気に入ってどうしても、ということはあるかもしれませんが)。

でも足が、とても小さい私たちは。全然合ってないパンプスを仕方なく買わざるをえなかったことがあります。靴売り場の販売員さんが「これが一番小さいサイズです」とおっしゃるので、かかとに指が2本入るほどブカブカで歩けたものじゃなくても、すでに痛くても、TPOに合わせた靴が必要だから、買ったことがあるのです。そんなパンプスをひっかけてすり足で移動して、足は水ぶくれが潰れて、腰も股関節も痛くて、全身に力が入ってガチガチで疲れ果てて、もう動けないと思ったことがあるのです。そんなとき、災害が発生したら。


靴は命を載せています。
行きたいところに連れて行ってくれるものです。
もし、その場から動けなくなる靴なら、
私は、もうその靴は靴の役目を果たせていないと思っています。

長々と当たり前のようなことを書きましたが、小足さんがパンプスを買うとき、ぴったり合うものが見つかった!とはならないことが多いです。そもそも選択肢が非常に少ないので…見つけても、なんでこんなにかかとが余るのか…というものが私には多かったです。

だから、Annaの靴はかかとをがっちり掴むよう設計しています。ハイヒールは特に、ストラップを付けていないので、かかとと足の両サイドを本気で掴んでいます。メリージェーンは太いベルトに豪奢なデザインが乗っていますが、かかとを離さないぞという強い意志があります。どちらも、前足部(足の付け根から前)には余裕を持たせています。

最初はほぼ確実に靴ずれします。だから、履き慣らし期間を長く取っていただくようお願いしています。少し履き口を揉んでも大丈夫です。

正直に言えば、この設計はあまり『商売向き』ではないと思っています。
「最初から柔らかくて楽」という、一般的に人気な靴とは真逆だからです。
それでも私は、足について来てくれる靴を選びました。

「脱げない」ということは、本来ならわざわざ語るような特長ではないと考えています。
靴である以上、履く人の足について来てくれることは、ごく当たり前の基本性能だからです。

でも、小さな足のパンプスでは、その当たり前を満たすことが意外なほど難しいのが現実でした。
だからAnnaでは、そこを何より大切にしています。

「パンプスなんて履物として成立してない」という考えを耳にすることも多々あります。
でも私は、成立させられると信じて作っています。
私は、履いている人を守ることこそ、靴がまず備えるべき基本性能であり、ものづくりの倫理だと考えています。
その上で、ファッションを楽しめること。
そのどちらも大切にしたい。

Annaは、その両方を目指しているブランドです。

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